陶芸徒然帳〜雑記2009年5月黒茶盌の焼成 28-2009/05/29 利休の並外れた、 そして揺るがぬ審美眼を示す逸話が 数多く残っています。 その一つを紹介します。 織田信長が 好みの障泥(※)の型が どうしても考案できず、 利休にその意匠を命じました。 出来上がった意匠を 信長は大いに気に入ったのですが、 数日後、障泥の型を紛失したといって、 もう一度作ることを命じました。 信長には利休を試す魂胆があり、 以前のものと異なれば 首でもはねかねないものがありました。 しかし、二つの意匠を 重ね合わせてみると 一分の違いも無く重なり合い、 信長を大いに驚かせ, 利休を再評価したといわれています。 ※ 障泥(あおり): 馬の左右の腹を覆って 泥の跳ねや矢などを防ぐ為の馬具 黒茶盌の焼成 27-2009/05/25 長次郎をはじめとする 初期楽茶盌は そのほとんどが総釉であり、 高台のまわりやその中まで 釉薬に覆われています。 多くの焼き物の場合 高台部分に 釉薬は掛かっていません。 焼成時、溶けた釉薬によって 作品が棚板にくっついてしまうことを 防ぐためです。 しかし利休の長次郎への要求は 「黒い茶盌」であり、 技術的な理由から、 高台部分に釉薬を掛けない というようなことは 利休にはあり得ないのです。 利休が黒茶盌に求めた 理想、美意識のみが 優先されたのです。 窯場風景 11-2009/05/22 姫甘草の花が咲きました。 甘草の名の付く植物は 他に野甘草や藪甘草があります。 姫甘草はその名の通り とても可憐で美しい花です。 ただ人間が感じる 「美しい」とか「可憐」といったものは 植物にとっては全く感知しない、 むしろ迷惑な話でしょう。 昭和天皇の仰った 「雑草という名の植物はありません。」という言葉には すべての植物に対する 深い愛情が感じられます。 窯場風景 10-2009/05/17 アオイの仲間に 「トロロアオイ」という植物があります。 やはり、非常に美しい花を 咲かせるのですが、 名前の「トロロ」の由来は その根にあります。 根にトロロ芋のような粘りがあり、 和紙を作るとき、 原料の繊維をつなぐ 糊の役目をします。 そしてトロロアオイから出来る糊には 虫がつかず、和紙が虫によって 穴が開けられることを防ぎます。 昔の人は トロロアオイが和紙の原料として 非常に優れていることを どのようにして発見したのか すばらしい知恵だと思います。 人間の衣食住において、 植物は非常に大きな役目を 果たしています。 さらに心の豊かさにも 植物は欠かせないものだと思います。 食籠のこと-2009/05/12 写真は「松竹の絵赤食籠」です。 食籠(じきろう)とは、 日常ではあまり使わない言葉ですが、 茶席における 蓋付きの菓子器を指します。 茶道の流派によって 扱いが多少異なるようですが、 季節に応じて、 漆器や陶磁器を使い分けます。 茶道具は茶席で用いられた時、 その本領を発揮します。 食籠も、 人数分の生菓子が盛られ、 蓋をして、 一膳の黒文字(箸)が添えられた時、 茶道具としての役割・美しさが 完成すると思います。 黒茶盌の焼成 26-2009/05/06 「一楽 二萩 三唐津」という言葉があります。 (「一井戸 二楽 三唐津」という言い方もあります。) いつ誰がいい始めたのかは わからないのですが、 茶道具としての茶盌のベストスリーを このように言いました。 何を基準に選んだのか 明白ではないのですが、 姿、形、肌、感触、使い勝手など、 色々な要素があると思います。 そしてそのすべてを包含するものが 「土の味わい」であると 私は思っています。 もともと土であったものが 宝石のように焼き上がることを 理想とする焼き物もありますが、 茶人が好んだこれらの焼き物は、 火をくぐり、 釉薬がかかっていても、 決して土の味わいを 失ってはいません。 宝石や貴金属の美しさに較べて 土の味わいは 解りにくいかもしれません。 しかし、茶盌を掌の中に包み込み、 一服の茶を喫する時、 土の味わいに勝るものは無いと 私は思っています。 |
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