陶芸徒然帳〜雑記

2008年12月

黒茶盌の焼成 9-2008/12/23
そのような方法で臭いを抜いた茶盌ですが、
念のため最後に濃い目の番茶をいれ一晩置きます。
番茶に含まれるタンニンが貫入を埋め、
万が一土に臭いが残っていても
封じ込めることが出来、
抹茶の香りを損なうことはなくなります。
一度乾燥したタンニンは再び水に溶けることは無いので、
影響はありません。

以前私は黒のぐいのみも作っていましたが、
日本酒が貫入や生地にしみこんで乾いたものは、
水に再び溶ける為、含んでいる糖分が表面に浮き、
不快なものになります。
温燗の日本酒を注いだ時など、
特に表面がニチャニチャと嫌なものです。

焼き物は作るだけでなく、
使ってみないとその良さや欠点は解らないと実感しました。
今は、黒のぐいのみは作っていません。

黒茶盌の焼成 8-2008/12/19
大きな鍋に茶盌をいれ、
火にかけてグラグラと煮た事もありますが
その臭いは決して消えませんでした。
いろんな方法を試した後、
たどりついた方法をここに紹介します。

下にボウルを受けた茶盌に
口まで一杯の水を入れそのまま一晩置いておくと
水が漏って下のボウルにたまっています。
水が茶盌を通過することになるのですが、
その時、水溶性の土のアクが一緒に流れていくのです。
毎日水を替え十日間続けると
たいてい臭いは抜けていると思います。
しつこいものでも2〜3週間続けると
ほぼ万全であると思います。

黒茶盌の焼成 7-2008/12/16
楽茶盌にはお湯を入れた時、
土の臭いのするものがあります。
これは、楽茶盌の場合
他の焼き物に比べて低火度で焼成され、
焼成時間も短い為
土のアクが残ってしまう為と思われます。
土の臭いがすると抹茶の香りを損ない、
結局使うことの出来ない茶盌と
なってしまいます。

私も自分の焼いた茶盌が
使えない茶盌になってしまうことの無い様
その解決は大きな課題でした。
窯から出した茶盌を水に入れないのは、
少しでも土のアクの臭いを
燃やしきってしまうためですが、
やはり臭いの残るものもあります。

京都吉田山茂庵陶芸ワークショップ-2008/12/13
茂庵にて半年に一回開催させていただいております陶芸体験を、
12月7日(土)に行いました。

前日の激しい雷雨に洗われた東山の紅葉はとても美しく、
静かなたたづまいの中で皆さん茶盌作りを楽しまれました。
手捏ねの場合ロクロのような職人的な技は不要なので、
最も個性が出るといっても良いかもしれません。
また自分で茶盌をつくることによって
これからの茶盌を見る目が変わってくると思います。

茶盌作りの後の茶室での一服のお茶はさらに心を和ませてくれます。
日常とは少し違う時間、空間を楽しんでいただけたなら、とても嬉しく思います。
写真は皆さんの制作風景と茂庵碧山居から望む大文字山です。

不完全な美 2-2008/12/12
やがて与四郎は大徳寺の大林和尚に参禅して宗易と名乗るようになり、
茶人としての成長を遂げていくことになります。

ある日紹鴎は利休を伴って招かれた茶会へ向かう途中、
一軒の茶道具屋で青磁両耳の花入を目に留めます。
明朝早く、使いの者に買いにやらせ、
「これで一会をもうけよう。」と思ったのですが、
その花入はすでに売れてしまっていました。

大変残念に思っていた紹鴎のもとへ利休からの使いの者が茶会の案内を持ってやってきました。
見ると、良い花入れを昨晩入手したのでその披露の茶会をしたいとの事です。
「あの青磁両耳の花入に違いない。」と思った紹鴎は当日何やらを懐に忍ばせて茶会に向かいます。
席に入ってみると床の間にはやはり白椿を入れた青磁両耳花入がありましたが、
その片耳が欠き落としてありました。

実は紹鴎が懐に持っていたのは金槌だったのです。
大変立派ではあるが完全すぎてわび茶には少々面白くないと感じ
その金槌で片耳をかいてやろうと思っていたのです。

自分が用意した金槌を使わせないだけの茶人は利休を他においては無いと紹鴎は感心したとの事です。

不完全な美-2008/12/11
落ち葉といえば千利休にまつわるこんな逸話があります。
利休が武野紹鴎に弟子入りしたのは十五歳であったとも十六歳であったとも云われています。
その頃の利休は与四郎と称していました。

紹鴎は入門したばかりの与四郎へ露地の掃除を命じたのですが、
露地には塵一つ木の葉一枚落ちていません。
暫く躊躇していた与四郎は一本の木をゆすって木の葉を落とし、
「掃除をいたしました。」を告げました。
その一部始終を見ていた紹鴎は早くも与四郎の非凡な才能を見抜きました。
紹鴎が目指す「不完全な美」を教えずして与四郎はすでに悟っていたのです。

木の葉の話-2008/12/08
私の窯場の南側には大きな欅の木がその枝を広げています。
夏には強い日差しを遮って木陰を作ってくれ、
今の時期には徐々にその葉を落として日差しの邪魔にならないようにしてくれています。
そしてその落ち葉はこれから向かう冬の寒さから大地を守り、
やがて腐葉土となって菜園の肥料となり、
美味しい野菜を育ててくれます。

黒茶盌の焼成 6-2008/12/03
「窯から出した茶盌を水に入れて急冷する。」とする説もあるのですが、
私の場合は水に入れません。
窯から引き出すだけで、充分急冷になるからです。

ただ、水に入れるほうが良い場合もあります。
陶器は、生地に用いる土と釉薬に熱膨張の差があり、
熱膨張の大きい釉薬は冷める時生地の土より多くの収縮があります。
縮みたいのに生地が支えて縮むことが出来ない為、釉薬にひびが生じます。
それが貫入といわれるものです。

その貫入が大きく入ると生地にまで通じてひびに見えることがあるのですが、
その前に水に入れて茶盌全体に細かい貫入を生じさせることによって、
大きな貫入が入ることを防ぐのです。
私の場合、熱膨張の差を考慮して生地の土を調合しているので、
水に入れる必要はありません。

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